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プラハよさらば

 さて、早くも大学2年の夏休みである。時が経つのは早えなあ。実は昨日までの1ヶ月間、チェコ共和国はブルノ市のチェコ語サマースクールに参加してゐたのだつた。

 入学時から、2年の夏休みにはチェコ語のサマースクールへ行かうとずつと思つてゐた。サマースクールとは、大学が夏休みを利用して外国人向けに開講する集中語学講座である。チェコ各地の主要都市で毎年開催されるこのイベントは、外大生達の夏の定番といつてよい。1ヶ月間、現地で思ふ存分チェコ語を学び、世界中から集つてくる学生達と共同生活を送る...そして共通言語はもちろんチェコ語。生れてこの方ずつと、クソ狭い日本語圏から一歩も出ることのなかつた自分にとつて、チェコ語サマースクールはまさしく憧れであつた。

 入学して早々、1年の夏休みに行く手もあつたのだが、さう頻繁に海外旅行の出来るやうなブルジョワでもないのに、基本文法すらままならぬまま現地へ赴くのはあまりにも勿体ない。最初の一年間は座学で出来る限りの知識を詰め込み、次年度のサマースクールをより有意義なものにしよう、そんな風に考へてゐた。しかしながら、昔から夏休みの宿題を8月31日に泣きながらやるやうな性分である自分が大学生になつたからといつていきなり勤勉になれる訣でもなく、結局以前の記事で書いたやうな、自墮落の境地に陥つてしまつたのである。

 そんな中で、日本のチェコ共和国大使館が、サマースクール参加を希望する日本人に奨学金を支給してくれるらしいとの情報が入つた。対象となるサマースクールは、プラハのカレル大学、ブルノのマサリク大学、オロモウツのパラツキー大学の3つ。入学当時の自分だつたら迷はずプラハのサマースクールを選んでゐただらうが、1年間チェコ語学徒をしてゐる間、どうもプラハぢやいかんだらうと云ふことになつてきたのだ。

 確かにプラハはチェコの一大中心であり、人口百万あまりの都市でありながら、パリやイスタンブールと並ぶヨーロッパに於ける世界的観光地の一つに数へられる。中世の歴史的建造物が今なほ数多く残る美しいこの街で、自分の先生達もみんな学んできた...このやうにプラハのサマースクールを選ばない理由などないやうに思へるが、世界的観光地であると云ふことは、その分観光客ずれしてしまつてゐると云ふことになる。恐らく街には英語、ドイツ語、中国語、日本語などチェコ語以外の外国語が溢れてゐるだらうし、最近プラハとソウル間に直通便が設定された関係で韓国人観光客も急増してゐるといふ。聞くところによると、世界的観光地であるが故に、バカンス気分でサマースクールに参加するやうな連中も多いらしい。加へて外大生もさぞかし多からう。折角チェコ語を学びに現地に来たのに、日本人同士でリトル・ジャパンを形成しべたべたと馴れ合つてしまふといふやうな事は絶対にしたくなかつたし、そんな光景は見たくもなかつた。更に、外大にはプラハ出身のネイティブが2人をり、決して悪気がある訣ではないだらうし、自分自身おふたりを敬愛してゐるのであんまりかういふ事は言ひたくないのだが、時々彼女らからプラハ以外の地方を見下すやうな態度が何となく感ぜられてしまふのだ。上京して以来、東京の自己中心つぷりにウンザリし続けて来たが、どうやらチェコでも事情は同じなのではないか。地方出身のチェコ語学徒としては、プラハ中心主義に与することなく、このチェコといふ国に地方からアプローチして行かねばならないのではないか。さういふ考へを持つやうになつた。

 そんな訣で、初めてのチェコ生活はプラハではない、どこか他の街で過さうといふ事になつたのである。しかし何よりも、一度も行つた事のないプラハに別れを告げる、この酔狂感がたまんなくたまんねえのだなあ。
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コメント

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日本人のいないところに行つたのは英断でしたね。

さうだよ(便乗)
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